「小説家達の休日」と「サンディニスタ!」

川本三郎・文、樋口進・写真の「小説家たちの休日」を読む。

様々な昭和の文人について、川本三郎のスケッチのような文章と樋口進による写真が掲載されている。文人達の写真はどれもなかなかインパクトがあり、特に永井荷風の写真は凄まじい。面白い本だった。

川本三郎の文章はいつでも平易で読みやすく、同時にある種の深みがある。たしかな知識と教養に裏打ちされているからだろう。そういったものが無ければ単に薄っぺらな文章になってしまうはずなので、川本三郎に憧れたとしてもこの文章は真似しない方が賢明だと思う。

わかりやすい文章を書くというのは非常に難しくて、知識や教養に自信があるほど傲慢で難解な文章になりがちだし、易しい文章を書こうとすれば、薄めたような表現になり、結局なんの中身も無い文章になってしまうものだ。

しかし川本三郎はどの媒体で文章を書いても、自分のスタンスが崩れることはなく、文筆家としての在り方がしっかりと確立されている。

この本では65人の小説家が紹介されており、谷崎潤一郎三島由紀夫といった超大物だけでなく、今は忘れられてしまっている作家まで、純文学・娯楽小説を問わず、様々な作家が取り上げられている。

同時期に読んでいた川端康成の「文芸時評」や、「週刊誌風雲録」という本と、登場する人物がかなりシンクロしていて、この時代の文人達に興味が湧いた。この本で紹介されていた作家の作品を読んでみたいと思う。


ザ・クラッシュ「サンディニスタ!」を久しぶりに聴く。
クラッシュの4枚目のアルバム。3枚組(CDでは2枚組)で、まさに渾身の超大作だ。

「パンクの精神」というものを知りたければ、この作品を聴くしかない。

音楽性、歌詞のテーマ、作品のコンセプト、作品の発表方法など、「サンディニスタ!」はパンクバンドの集大成であり終着点である。この作品で表現していること、あるいは表現しきれなかったという事実も含めて、「サンディニスタ!」ほどパンクの精神が熱く内包されている作品は他にありえない。